Seattle

シアトルのいま

「外から見たらリクルートがIT化しきれない理由が見えてきた」UXディレクター鐵穴博満氏が見たシアトルのいま

リクルートライフスタイルの特長のひとつとして、エンジニアの海外研修制度を設けていることが挙げられます。

リーン開発チームでサービスの企画開発に携わり、現在はUXデザイングループでUXディレクターとして活躍する鐵穴さんは、2015年9月にシアトルを視察しました。

前編「AmazonとMicrosoft出身の優秀な人材が集まっている」ではシアトルとシリコンバレーを比較しながら米国でのテクノロジー事情を伺いましたが、後編ではそこから導き出したリクルートライフスタイルの課題を聞きました。

聞き手/構成:山田井ユウキ 編集/写真:小川楓太(NEWPEACE Inc.)

MicrosoftとBrainbox Consulting。対象的なふたつの企業訪問で感じたこと

—— 次に訪問したのはMicrosoftですか?

鐵穴 はい、4日目はMicrosoftを訪問しました。Microsoftが提供している「Microsoft Azure」というクラウドプラットフォームについて話を聞いたのですが、これが期待以上に面白かったです。

—— 「Microsoft Azure」とはどんなサービスなのですか?

鐵穴 データをもとにクライアントのビジネス課題を解決する方法を提供するというサービスですね。そのためにはデータを分析する必要があるわけですが、Microsoftはこの分析を4段階に分けて考えるのです。
従来の分析では「何が起きたか」と「なぜ起きたか」の2段階なのですが、ここに「何が起きるか」「どうすれば起こせるか」を加えた4段階の分析です。
これをアドバンスアナリティクスと呼んでいて、彼らはそれをマシンラーニングで安価に提供しているそうです。

—— なるほど。おもしろいですね。

Microsoftのオフィス

鐵穴 Microsoftの次に訪問したのは、クラウドとコンサルティングを一緒にしたようなビジネスを行っている会社です。データを見える化した経営コンサルなんです。ユニークなのは、彼らがもともとニューヨークにいたことです。

—— なぜニューヨークからシアトルに?

鐵穴 東海岸は金融など若干オールドタイプなビジネスが中心なんですね。西海岸の方が先進的な感じがするので移ってきたそうですが、そこでシリコンバレーを選ばずにシアトルに拠点をおいた理由は前に言った通り、家賃と人材の問題です。

—— まさに昨今の風潮を体現しているベンチャーなのですね。

鐵穴 そこで聞いた話ですが、以前は各企業が自社サーバを持つことが多く、自分たちでメンテしたり保守したりしていたわけです。クラウドを使おうとすれば、社内を説得するのも大変でした。今は逆に自社サーバにしようとする方が大変なんだそうです。弊社は自社サーバを使っている部分もあるのですが、もしかすると今後は日本でもそういう流れになり、変わっていくかもしれませんね。

—— コスト面などを考えてもクラウドのメリットは大きいですよね。

鐵穴 それから、光ファイバーのゲートウェイのひとつが、ポートランドとサンノゼにあるらしいんですね。もちろんコンマ何秒程度の話ですが、少しでもゲートウェイに近いところに拠点を置きたかったのだそうです。

—— 米国ならではの発想ですね。

企画中心の企業文化は変えていかなければいけない

—— 今回の旅で特に印象に残った企業やお話は?

鐵穴 Microsoftの「Microsoft Azure」以外では、あとは「米国のCookpad的な立ち位置の会社」、それから「アパレルの商品管理の効率化をする会社」でしょうか。彼らに共通しているのは、お金がない分、クレバーにプロモーションしていることですね。
弊社の場合、どうしても資金に頼るところがあるんですよ。CMを打ったり、広告代理店に任せきりになったりしてしまう。企業体力があるからこそ、逆に頭を使えていない部分があると感じています。Webマーケティングはまだまだだなと痛感しましたね。

—— シアトルも魅力的な町でしたね。

鐵穴 ITの聖地として日本でも名前が出てくるのは、そう遠くない気がしますね。

—— 一方で、まだシアトルがシリコンバレーに及ばないところがあるとすればどこでしょうか。

鐵穴 やはりお金だと思います。出資してもらいやすいのは、それでもまだシリコンバレーなんですよ。ベンチャーキャピタルも多いですからね。だけど、シリコンバレーにそれ以上の魅力はないと思います。GoogleもAdobeもFacebookも、シアトルに拠点を置こうとしているそうです。シアトルはこれから楽しみな町です。

エンジニアとコードを理解した上で話す鐵穴さん。新卒のとき研修で習ったJavaが役立っているという。

—— 海外研修を通して、自社の課題も見つけられたのでは。

鐵穴 課題は多いと思いますね。
弊社では企画ディレクターと開発ディレクターというふたつのディレクターがいて、前者は何をなぜやるのかを言語化する役割、後者はそれをどう実装すればいいかを考える役割です。
これまではそこが分かれてしまっていたのですが、5年ほど前からネット系の人材を採用し始めました。ただ、企画中心の企業文化に埋もれてしまい開発をおざなりにする姿勢のディレクターも多く、その理念が上手く機能しているか疑問を感じるときもあります。
自分に求められている役割は、その突破口を実践していくことかなと思っています。

—— 鐵穴さんはリーン開発チームから、UXデザイングループに異動されたのでしたね。

鐵穴 やることは基本的に変わらないのですが、もう少しレイヤーが上がりました。
これまではUIやUXを考えるだけでしたが、今後はビジネス設計もしていきます。具体的には新しいメディアを立ち上げて、どういうことをやっていくのか、そのストーリー作りをやろうと考えています。



Microsoftのような大企業からベンチャー企業まで、バラエティに富んだ企業訪問を通して、自社の課題を見つめ直したという鐵穴さん。
一段上のレイヤーに上がったことで、開発とビジネスの両方を手がけていきたいと熱く語ってくれました。
シアトルの海外研修で学んだものは予想以上に大きかったようです。

鐵穴 博満

(UXデザイングループ)

1988年生まれ。2012年リクルートライフスタイル入社。「ホットペッパー グルメ」の企画開発ディレクション業務を経て2014年、リーン開発部門に異動。積極的にユーザー視点から使いやすい画面(UI改善)にしていくための洗い出し~企画開発~実装していくテーマにチャレンジ中。

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