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第二のシリコンバレー・シアトル

「AmazonとMicrosoft出身の優秀な人材が集まっている」UXディレクター鐵穴博満氏が見たシアトルのいま

リクルートライフスタイルの特長のひとつとして、海外研修制度を設けていることが挙げられます。

リーン開発チームでサービスの企画開発に携わり、現在はUXデザイングループでUXディレクターとして活躍する鐵穴さんは、2015年9月にシアトルを視察しました。
米国のITといえば、シリコンバレーというイメージが強いですが、あえてシアトルに行った鐵穴さんが現地で得たものは何だったのでしょうか。

聞き手/構成:山田井ユウキ 編集/写真:小川楓太(NEWPEACE Inc.)

シリコンバレーではなく、シアトルを訪れた理由

—— まずは鐵穴さんの普段のお仕事について教えていただけますか?

鐵穴 10月に人事異動があり、現在はUXデザイングループでUXディレクターをしています。それ以前はリーン開発チームにいました。

—— リーン開発チームとはなんですか?

鐵穴 カスタマーが使う画面のUI改善を行う専門部隊です。グループとしては昨年の下期に発足した新しいチームですね。

—— 具体的にはどういった仕事を?

鐵穴 UI改善のスピードを上げることを目的としています。今までリクルートは月に1回のペースで新しい機能をリリースしてきました。
しかし、それでは年間で12本しかリリースできないペースです。そこで週に1回リリースするサイクルにすることを目的として発足したのがリーンです。

—— なるほど。リーン開発チームにいた鐵穴さんがシアトル研修へ行くことになったきっかけは何だったのでしょう。

鐵穴 リクルートライフスタイルには表彰制度があり、私は昨年の年間VP賞をいただくことができました。表彰された社員は、海外研修へ行くことができます。
研修なので海外のIT企業を視察することを主な目的とし、今回は私を含め、3人でシアトルへ行きました。

—— ITの本場というとシリコンバレーのイメージがありますが、なぜシアトルだったのでしょう。

鐵穴 たしかに米国のITの中心というと、シリコンバレーが真っ先に思い浮かびますが、今リクルートではヘルスケア領域にも力を入れようとしていて、シアトルはその領域が進んでいるということもあります。さらに、実はいま、米国ではITの中心地がシリコンバレーからシアトルに移行しつつあるという話があるのです。

—— えっ、それは意外です。詳しく聞かせてください。

鐵穴 まず、シリコンバレーは家賃が非常に高額です。安アパートでも月額30万円くらいしますし、40〜50万円も当たり前です。スタートアップは特にお金がない企業も多いですから、生活費が高騰してしまうと大変ですよね。
逆にシアトルは家賃もシリコンバレーより安いですし、人材も豊富です。

—— シアトルに人材が集まるのはなぜですか?

鐵穴 シアトルにはAmazonとMicrosoftの本社があり、何万人という人が働いています。この2社出身の人材が、シアトルのベンチャーで活躍しているというわけです。

—— シリコンバレーもシアトルも豊富に人材を抱えているなら、家賃が安く暮らしやすいシアトルの人気が高まるのも納得ですね。シアトルはどんな町でしたか?

鐵穴 シアトルは西海岸の北方に位置する都市です。私は米国自体が初めてだったので、他の町と比べることはできないのですが、一緒に行った二人は仙台っぽいと表現していました。

—— 仙台ですか!

鐵穴 私は仙台も行ったことがないのでわかりませんが(笑)、私の知っている町で例えるなら札幌がイメージに近いかもしれません。
人がおおらかで、ギスギスしていない。田舎町ですが、Macy'sなどの大型百貨店もあり、生活に必要なものは一通り全部そろっています。町もコンパクトで、何をするにもちょうどいいサイズなんです。食事だけは日本の方が美味しいけど、それ以外は一切不自由がありませんでした!

ITだけでなく、様々な企業を訪問した濃厚な2日間

—— かなりシアトルを気に入られたようですね。ではここからは旅程と、実際にシアトルでどんな企業を訪問されたのかをお聞きしていきたいと思います。

鐵穴 初日はシアトルに17時頃到着したので、そのまま何もできませんでした。
翌日はまず、グラフィックで情報をどう伝えるのかを専門にしている企業を訪問しました。アニメーションやインタラクティブデザインを追求して、サイトの見せ方などをコンサルティングしています。
その後はその後は、ITだけでなく、様々なジャンルのPRを行う会社を訪ねました。

—— どんな話が聞けましたか?

鐵穴 面白かったのは、最近ではプロモーションにInstagramを使っているという話です。
たしかに私もFacebookは使ってはいますが、ビジネスのつながりもあるので、変なエントリはできません(笑)。
Instagramは写真を投稿するだけと手軽なこともあり、障壁が少ないようですね。

—— たしかにInstagramは日本でも人気ですよね。

鐵穴 Instagramの話ですと、マネタイズの話が面白かったですね。今までは広告で収益を上げていたらしいのですが、これからはECにシフトさせようとしているそうなんです。
どういうことかというと、Instagramに投稿されている写真の品物が実際にInstagram経由で購入でき、そのマージンで収益を上げるというやり方です。

—— なるほど、それは面白いですね! そうした著名なサービスにリアルタイムで起きていることが知れるのも、海外研修の魅力ですね。

鐵穴 その後訪問した米国のCookpad的な立ち位置の会社も面白かったですよ。社員が4人しかいないんです。

—— 4人ですか!

鐵穴 CEOはインド人で、以前はシリコンバレーでベンチャー企業をいくつか経営した後、EXITして起業したそうです。シアトルに移った理由は家賃が安くて良い人材がいるからだとか。
CTOは中国系の方で、一人でサーバサイドもiPhoneアプリもAndroidアプリも作っている人。彼はもともとAmazonとMicrosoftで働いていたそうですよ。

—— 先ほど鐵穴さんが仰っていたシアトルで起業する理由がすべて当てはまっていますね。

鐵穴 まさしく、絵に描いたようなシアトルのベンチャーですよね。まだ起業して1年も経っていませんが、SEOでは2〜3位に入ってくるようなサイトに成長しているそうです。当たるキーワードを選定して、かなりクレバーに記事制作を行っていた印象です。レシピサイトなので、食材を販売して、そこからマージンを得ることでマネタイズしようと考えているようです。

—— 米国では特に有力なレシピサイトはないのでしょうか?

鐵穴 圧倒的にシェアをとっているサイトはまだないようですね。

—— インフォグラフィックにPR会社にレシピサイト……初日からバラエティに富んだ企業を回られたのですね。

鐵穴 今回はITと関係ない企業が半分以上ですね。

—— 2日目はどのような場所をまわられたのでしょうか?

鐵穴 2日目で面白かったのはアパレルの商品管理の効率化をする会社です。

—— 商品管理の効率化といいますと?

鐵穴 普通のアパレルショップって、いろいろなサイズの服を陳列棚に置きますよね。それをお客さんが手にとって、体に合わせたり、試着したりする。
そうすると、店員さんはずっと商品の整理整頓をしなければならないですよね。

—— たしかに、その通りです。

鐵穴 このサービスを導入すると、お店では一つのサイズしか陳列しません。
商品にはQRコードとNFCのタグがついていて、お客さんはスマホで照合してから試着室に向かいます。試着室の中に入ると、先ほど読み取った商品が30秒以内に落ちてくるのです。気に入らなければダストボックスに入れておけばOK。
こうすると各サイズすべてを陳列しておく必要がなく、売り場面積が5分の1に抑えられるのだそうです。店員も整理整頓に追われなくてもいいし、接客に集中できますよね。

—— 画期的なシステムですね!

鐵穴 実際にMacy'sで今年の夏、水着売り場に導入されたそうですよ。設備投資にもそれほど費用はかからないようです。
どうしてそんなことが可能なのか聞いてみると、「It’s Magic!」ってごまかされましたけど(笑)。
このサービスは日本でも需要があると思いましたね。

—— 日本は狭いですから、売り場面積が抑えられるのはメリットがありそうです。

鐵穴 彼女のすごいところは、彼女自身がアパレルのリアル店舗をいくつも持っていることです。そもそも起業した背景には、彼女自身が現場の作業で忙しいという問題を解決したいという思いがあったそうです。

—— 自分自身のためでもあったわけですね。

鐵穴 さらに彼女は起業する前、アパレルショップの販売員として働いてもいたそうです。シアトルの大手企業でバイスプレジデントまで務めていた人なのですが、その人が販売員として働き、そこで使えるサービスを開発するというのはすごいバイタリティです。とてもパワフルな人でした。



シリコンバレーを追い抜く勢いで、IT都市としての成長を続けているシアトル。
今もっとも熱い町を訪れた鐵穴さんが過ごした濃厚な2日間について伺いました。後編では、3日目から帰国日にかけてのお話を伺います。



次回「外から見たらリクルートがIT化しきれない理由が見えてきた」

鐵穴 博満

(UXデザイングループ)

1988年生まれ。2012年リクルートライフスタイル入社。「ホットペッパー グルメ」の企画開発ディレクション業務を経て2014年、リーン開発部門に異動。積極的にユーザー視点から使いやすい画面(UI改善)にしていくための洗い出し~企画開発~実装していくテーマにチャレンジ中。

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